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 寄せ書き 
小松良明「新一さんと左京さん 〜 仲良しな困ったさん」

小松左京氏 次男
 父・小松左京は、お酒を飲み気持ちがよくなると、大好きなSF作家のお仲間の話をしてくれたものでした。
 なかでもダントツで登場回数が多いのが星先生でした。

 父は友人を招き、話をしながらお酒を飲むのが大好きで、宇宙論から、民族学、落語の話から、お酒や食べ物の薀蓄と、まるで、テレビ番組をザッピングするかのように話が飛び出ます。 皆がふんふんと興味深く聞く中で、話題がSFになると、いよいよ父の十八番、星先生のエピソードの登場です。 鏡明先生も「寄せ書き」で書かれていますが、星先生の「いってはならない言葉を叫ぶ」事件です。
「いや〜、星さんは本当に、困った人なんだよ」
 煙草をふかし、眼を細めながら、父は語り始めます。
 とある場所、とあるシチュエーション、小松左京ならではの緻密な描写力で、聞いているこちらも、まるでその場に居合わせているかのようでした(すいません、本当は良く覚えているのですが、諸般の事情で詳細は割愛させていただきます)。
 父は少し声のトーンを落とし、こちらの注意をさらにひきます。
 「……星さんは、やおら立ち上がると窓をガラッとあけてだな…… 外にむかって……」
 ここで一瞬タメが入ります。
 思わず身を乗り出して聴こうとすると、父は巨体に似合わぬ素早い動きで、曲芸をするセイウチのように、突如ズンと立ち上がり、星先生の声色を真似て大声で
『☆☆☆☆〜!!』
と叫ぶのでした。

 小松左京による星先生のモノマネ、筒井康隆先生のスラップスティックを思わせるエピソード(禁断の「熊の木音頭」みたいです)。日本SF御三家が揃い踏みしたかのような、何とも豪勢な出し物でした。

 家で飲んでいる時は良いのですが、外で酔って上機嫌になり、
「☆☆☆☆〜!!」  
と叫びそうになると、今度は慌てて家族が止め役に回ります。
 いや〜、左京さんも本当に困った人だったのです……。


 南極、ギリシャのサントリーニ島、中南米奥地のマヤ遺跡と、取材旅行で留守がちだった父の書斎には、常に一枚のモノクロ写真がかざってありました。
 ピザを前に、フラスコ型の独特な形のキャンティワインのボトルを傾けながら、楽しそうに話をしている星先生と父の姿を写したものです。
 引っ越しても、家を改築しても、そのモノクロ写真は常に我が家の書斎に飾られてきました。
 子供からすると、父の書斎のちょっとしたシンボルです。

 父の生前、星マリナさんがお見舞いに来てくださった際、宝塚の手塚治虫記念館で開催されていた「星新一展」のチケットをいただきました。
 沢山の展示物を、楽しくそして懐かしく拝見していると出口の近くに、お酒を酌み交わす父と星先生の姿がありました。あのモノクロ写真です。

 写真は、星先生のお宅に飾られていたものでした。
 仲良しの二人の、仲の良い写真は、仲良く一枚ずつ、それぞれの家で大事に飾られていたわけです。
 なんだか、二人の書斎をつなぐ異次元トンネルの扉みたいです(ロッドサーリングなら、SFドラマのネタにしそうですね)。

 今、二人は天国で、あの写真の姿のように、楽しげにハチャメチャな話をエンドレスに繰り広げていることでしょう。
 願わくば、天国の門をガラッとあけて、下界にむかって声を合わせて
「おーい でてこーい、☆☆☆☆〜!」
とだけは叫ばないでいただきたいものです。
 天は多少にぎやかでも良いですが、こんなご時世、なんといっても「地には平和を」ですから。


2013年5月

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