ごあいさつ 家族の話星マリナ 「あーん。あーん」は、泣きやまない赤ちゃんに困りはてる両親の話です。 もしかして自分が赤ちゃんの時にこんなに泣いていたのだろうかとおもしろく思い、母に聞いてみたことがありました。 「あれは、ユリカよ。マリナはまだ生まれてなかったんだから」と言われ、なるほどと思いました。 自分が2児の母となり、ひとりめの子育てにいかに苦労するかがわかってからは、たしかにあの物語は姉(ひとりめの赤ちゃん)の話であるとさらに納得したものでした。 物語のなかに自分をさがしてみると、「ユキコちゃんのしかえし」で博士の薬をつけてからのやたらと強気なユキコちゃんと、『ほら男爵 現代の冒険』の「砂漠の放浪」に出てくる、会ったばかりの大人と普通に会話するミニラちゃんは、私に似ているような気がします。 母が私のことを「自信過剰でうらやましい」と言ったことがありましたが、そんな私の性格が父のインスピレーションになったのでしょうか?? 今年2月に母が亡くなりました。 89歳でした。 葬儀社の方から渡された葬儀のカタログを見ていて、私は式場をたくさんの花で飾りたいと思いました。 母は花が好きで、旅行先でもキレイな花を見つけると、その前でよく写真を撮りました。 車のなかから見える遠くの花にも、通りかかった家の垣根の花にも、「わぁ、キレイねー。なんの花かしら」と心から感嘆したものでした。 祭壇(神式)には、ピンクを基調にした花をえらびました。 お葬式としては、かなり派手です。 そして「もっと花を。もっと花を」と考えていて、突然ひらめきました。 「花とひみつ」のハナコちゃんのモデルは母だったのです。 なぜ、こんな簡単なことに今まで気づかなかったのか。 母はまさに「キクやチューリップのような草花も、サクラやツバキのように木に咲く花も好きだった」のです。 そんな母のために、SF作家の父は「世界中を花でいっぱいに」してあげたいと考えたことでしょう。 娘である私も自然に、花でいっぱいにして送り出してあげたいと考えたわけで、今になってようやくハナコちゃんのモデルがわかったのです。 結果、式場も棺も明るい色の花で埋まりました。 葬儀に参列してくださった江坂遊さんから「終始、お花畑の中にいる気分でした」という感想をいただいたとき、それが天国の父からまわってきた言葉のように感じられました。 「花とひみつ」は、父が和田誠さんの私家版絵本のために1964年に書いたショートショートです。 雑誌や新聞からの依頼とちがうので、書くときの父はリラックスしていたことでしょう。 1970年には、岡本忠成さんによって映像化されました。 その映画「花ともぐら」が小さな映画館で上映されたときに、私と姉も母に連れられて見に行きました。 ハナコちゃんが動いて話す、この上なくかわいい映画を見て、母は幸せな気持ちになったことでしょう。 だれかを幸せにしたいと思って書いた作品が、実際にその人を幸せにして、そして、いつまでも読まれつづけるというのはステキなことですね。🌷🌸🌻 1961年 星新一と香代子 2023年9月6日(ホシヅルの日) |
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