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 寄せ書き 
佐藤隆信「不思議の効能」

出版社社長
 星新一さんは通常「SF作家」と言われていますが、私は勝手に「不思議作家」と呼ばせてもらっています。 宇宙人が出てくるSF的なお話ももちろん沢山ありますが、悪者がずっこけるお話や逆に悪巧みが何故かうまくいってしまうお話、あるいはほのぼのとしたストーリーの中で最後にえっと驚かされる「オチ」がついたお話など、ひとくくりにできないものが多いと思います。 その作風を敢えて表現すれば、「不思議なお話」群としか呼べないような気がしています。

 そんな「不思議なお話」群を読んでいくと、人は何を思うでしょうか。 どんなことを感じるでしょうか。 あの「オチ」に繰り返し繰り返し触れるうちに、人は何か大きなもの、大きな力の存在を感じるようになり、心の中に「神様」的なものを抱えるようになるのではないか、と私には思えてなりません。 もちろんそんなことは読者は意識しないはずです。 特に小学生や中学生の頃に読めばそんなことは全く考えないでしょう。 しかし無意識のうちに心の中に、必ずしも宗教ではない「神様」が育つのではないか。 「お天道様は見ている」的な、大きな力の存在を感じられるようになるのではないか。 そんなふうに思います。

 多くの日本人には、欧米人が持つキリスト教的な「神」はいません。 だからこそ、星さんのショートショートを読んで一人一人の心の中に芽生える「神様」は、とても大事なものだと思うのです。

 私は仕事柄、入社試験の面接をすることがあります。 その際はもっぱら、厳しい場面でもへこたれないで仕事に向かえるか、入社後も成長していく可能性があるかなど、能力というよりは人物本位で学生さんを見るようにしています。 短時間の面接では、なかなかどのような人物かはわかるものではありませんが……。 最近は、自分に妙に自信がある人がいて、その話しぶりを見ていると、他人の話をしっかり聞いてその真意をくみ取ることができるのだろうかと心配になることもままあります。 しかし、星新一さんの作品を小中学生の頃に読んできた学生には、なぜか健全な人が多いように感じられます。 もちろん正確に集計したわけではありませんが、真っ当なバランス感覚を持ち、今後の成長が期待できそうな人が多いのです。 星新一さんの作品を一冊でも多く、一人でも多くの子供たちに届けたいと、心の底から思っています。


2019年1月

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