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 寄せ書き 
鈴木理策「星新一さんに会いに」

写真家
 星新一さんのお墓が青山墓地にあることは以前から知っていた。 縁あって近くに住むことになり、以来ときどき散歩の途中にお参りさせてもらっている。 灌木に包まれた墓石の前で手を合わせ、星さんの作品にドキドキした子どもの頃のこと、今の時代のこと、自分の作品制作について考えていることなど、その時々に思い浮かんだ話題を心の中で語りかけている。 お会いしたこともないのに。 新型コロナウィルスの感染拡大による緊急事態宣言で街から人が消えた時は、星さんが書いた未来のようだと感じた。 この状況を見たら、どんな話を書かれただろうか?  そんなことを考えながらお参りに行って手を合わせたら、思わず「コロナをなんとかしてください」とお願いしてしまった。 「そんなことを言われても……」と戸惑われたに違いない。

 星新一作品との最初の出会いは小学3年生の時、国語の教科書に載っていた「鏡の中の犬」だ。 不思議な鏡を通した少年と犬の束の間の出会いのものがたりで、その結末にはショックを受けた。 自分が取り返しのつかないことをしてしまったような、何ともばつが悪い気持に包まれていると、先生が「この続きを書いてみましょう」と言った。 慌てて割れた鏡をつなぎ合わせ、犬と再会できるように作文したことを覚えている。

 私は生後6か月の時に父を亡くしており、父親との記憶がない。 物心ついてからは、遺された写真や手帳を通して父親と出会い直している。 痩せ型の体形、ボリュームのある髪型、几帳面で理知的な筆跡、俳句に向けた情熱。 そうした断片をつなぎ合わせながら父を想っているが、その姿はいつもおぼろげで、完全にフォーカスが合うことはない。 ある時、1960年代の星新一さんの写真を見て、父の印象と重なる部分があるように感じた。

 また時々伺いますね。 これからもよろしくお願いします。


2022年9月

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