1965年に「サンデー毎日」で連載したミステリー風の短編14話に、同年「小説新潮」に発表した1話(人形)を追加したものです。
収録されている15話が、すべて「ノックの音がした」ではじまるのが特徴。
自身が翻訳したフレドリック・ブラウンの「ノック」からインスピレーションをうけた経緯が、あとがきにくわしく書かれています。
講談社文庫から新潮文庫にうつる時点で、すでに100万部をこえていた隠れたベストセラーです。
ノックの音ではじまり、一室内で物語を完結させるのは大変?
この点は私にとってそれほどの苦痛ではない。
むしろ書きやすいタイプなのである。
(『きまぐれ星のメモ』収録エッセイ「出不精な作風」より)
そもそも私の作品の登場人物たちは、どれもこれも飛びまわるのがきらいである。
おそらく作者の性格の反映であろう。
(出不精な作風)
主人公をあちこち移動させると、読者も頭の切り換えをしなければならない。
その描写をすると、作品が長くなる。
一幕物のドラマだと、短編としてわかりやすい。
(『ノックの音が』あとがき)
2018年1月
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